滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
まさか落し物をするとは想像もしなかので、
そこまでの知識は持ち合わせていなかった私。
もしかしたらなくしたものが帰ってくるのは、
細かいことに律儀な日本ぐらいなのだろうか。
「じゃ…もう帰ってこないね。仕方ないか」
か細く呟いた私は運ばれてきた料理にてをつける。
無理だろうなとは思っていたが、
アメリカの事情を知った以上、きっぱりと諦めるしかなさそうだ。
「現金たくさん入ってたの?それとも大切な何かが入っていたとか…」
「元カレがね、付き合って初のクリスマスにプレゼントしてくれたの。財布」
小さくため息をついた私を彼は向かい側でジッと見つめている。
「…実はね、私元々地方出身で就職に合わせて東京に来たの」