滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
そうだ。
もう私を支えてくれる人はいない。
ひとりぼっちになってしまったのだ。
「そんなこと、わかってるよ。もう頼れる人なんかいないんだから」
帰国してカレとまた同じ空間を共にしないといけない現実。
私とは別の人間といちゃつく光景を今度は第三者の立場で受け止めなければならないんだ。
「…傷心旅行っていう名目で来た癖に、結局さらに傷を抉るような結果になっちゃったな」
「…」
彼が私を見つめる中、思わずへへへと苦笑い。
カレの存在が自分にとってどれだけ大きかったか、
まざまざと思い知らされた旅だった。
簡単に忘れることなんかできない。
それぐらい好きな人だったんだから。