滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「ホント大丈夫かよ。なんだか心配だな」
「何言ってるの、一人でも大丈夫だよ。子供扱いしないで」
心配げに話す彼にまたまた苦笑い。
彼と出会っていない、
上京したばかりの生活に戻るだけだ。
それに別れで出来た心の爪痕は、時間が過ぎればきっと自然と癒えていくに違いない。
そうやって過去の恋愛も乗り越えてきたんだもん、…大丈夫。
大丈夫、大丈夫…大丈夫。
「ーー無理してんだろ。明らかに」
グサッと私の心に突き刺さる彼の言葉。
「大丈夫、大丈夫だって無理矢理自分自身に言い聞かせてるみたいだ。本当は大丈夫じゃないくせに」
「っ…」
彼の言い分に息を詰まらせ反論出来ないのは、
自分の根底にあった気持ちをはっきりと口に出したから。