滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
私がどれだけ大切にしていたか、
彼は知っていたはずなのに…。
「奈緒子っ!」
「ーーへっ!?」
「何自分の世界に浸ってんのよ!私の質問に答えなさい…!」
いつの間にか頼んでいたメニューがテーブルの上に並んでいて、
あずさはジョッキ片手に、その表情は既に酒にのまれている。
「明日も早いんだから、飲み過ぎない方が…」
「何で奈緒子に限っていい男ばかり寄ってくるのよぉおお」
あずさをまぁまぁと宥めながらも、
頭の中では全く違うことばかり考えている私。
ーー明日も彼に会うんだよね…。
憂鬱っていうか、何て言うか…。
胸の奥で小さく高鳴る鼓動を、
私は敢えて見て見ぬ振り。
じゃないと、上司である彼と仕事なんて
出来るはずもないからだった。