滴る雫は甘くてほろ苦い媚薬
「まだ仕事してたの?珍しい」
「部長に今日中までにまとまった仕事は片付けておけって言われてね」
俊介は隣のデスクに軽く腰かけながら、パソコンと戦う私を見守っている。
「何か、とんだ部長来ちゃったな。あれで二十歳らしいぜ?信じられないよ」
はぁとため息ついて、しかめっ面のまま腕を組む。
「しかも企画書一からやり直しって。もう十一月だぞ?試作品作り上げるまでどれだけ時間がかかると思ってんだ…!」
愚痴を零しながら再びため息。
口調がどんどん荒くなってきているとこを見ると、
相当彼に不満を持っているみたいだ。
「奈緒子もそう思う…、あ」
「!」
俊介の口からさりげなく出た私の名前。