赤い流れ星
「美幸、あれだけで良いのか?」

「食べてからまた注文するのよね?」

夜は、私の希望で久々のファミレスに向かった。
二人は私をよほどの大食漢と思ってるらしく、少ししか注文しない私のことをとても心配そうにしていた。
確かに、以前の私はよく食べてた。
一口だけ食べたいようなのも注文してたから、テーブルの上はいつもいっぱいいっぱいになってたっけ。
最近は、シュウのお陰でけっこう野菜中心の食生活をしてたからいつの間にか胃も小さくなったのか、それとも節約癖が身に付いてしまったせいなのか、私は注文の仕方まで変わってたようだ。



「美幸、本当に具合の悪い所はないのか?
ずいぶん痩せたみたいだけど…」

「大丈夫だって。
本当にそんなんじゃないんだよ。
私…いいかげん、しっかりしないといけないなって思って、それで家事とかを今までよりずっと真面目にやるようになって……」

「どうして急にそんな気持ちになったの?」

「えっ!?そ、それは……」



母さんは昔からけっこう鋭いところがある。
今までのだらしない私が急に変わったとなると、不思議に思うのも当然だ。
と、とにかく、なんらかの理由をつけとかないと…



「……ほ、本を読んだの。」

「本?」

「う、うん。
生まれた時からいろんな逆境にあって、それでもへこたれない少女の話で……
確か、海外の実話を元にした話だったと思うんだけど、それ読んだらすっごく感動して、私ももっと頑張らないといけないって思って……」

話しながら、なんともいい加減な答えだなぁと呆れた。
こんな話じゃ母さんはきっと納得しないだろう。
でも、咄嗟のことだったから、そんな嘘しか思いつかなかったんだもの。
後はなんとか誤魔化すのみ!



「そうか…本というものは時には読んだ人の人生を変えるようなことさえあるからな。」

あんなへたくそな嘘を父さんは信じこんだ様子で、しみじみとそう語った。



「そ、そうなの。
最初はいやだと思う日もあったけど、掃除も畑仕事も習慣になってしまうと、それほど苦でもなくなって来たよ。
そんなことを続けてるうちにちょっと痩せて来て、痩せたら、なんとなくダイエットも成功するような気がして、それでコーラをやめたんだ。」

父さんのおかげで弾みがつき、私はすらすらと話を続けた。



「そうだったのか。
でも、若いうちはちょっとくらいぽっちゃりしてても良いんだぞ。
痩せることばかり考えて身体を壊したら大変だ。
家ではちゃんと食べてるのか?」

「食べてるよ。
私が痩せたのは動いてるせいで、食べるものを減らしたわけじゃないから安心して。」

母さんが黙ってるのは少し気になったけど、多分、どうにか誤魔化せたと思う。
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