アラサーラプソディー♪~運命のヒトは誰?~【加筆修正版】
「それで?」
「うん、その人、省吾と尚兄の病院の先生の娘さんだって…」
「あぁっ? 誰だよ?そいつ?」
掴んでいたハンドルの手に力がこもったのがわかった
「神谷さん、って言ったかな…」
「神谷ぁっ?!!」
まるで、幽霊か何かを見たかのように驚いた尚兄は、再び私の方を向く
「ま、前! 尚兄、危ないってば!」
さすがの尚兄も、走行するのを諦め、路肩に車を停めるため、左にウインカーを出した
「神谷って、あの神谷かよっ!
チッ… よりによって…」
尚兄は、ハンドルをバンっと叩く
「なに?何かあるの?その、神谷って、人」
眉間にシワを寄せた尚兄
少しの沈黙のあと
言いにくそうに口を開いた
「彩月…どうにかしてやりたいが
まだ、ぺーぺーの研修医のオレじゃ、神谷には太刀打ちできねぇ…
オレとお前の夢である医者になるためには、今、病院追われることは
無理だ…
すまん、彩月」
目尻が下がった尚兄は、かなしそうな表情になった
「尚兄…」
尚兄が医者になるのは、私たち兄弟の夢…
それを、私の事情で壊してしまうのは、私だってイヤ
一度、省吾本人に会って、省吾の気持ちを確かめ、私自身も覚悟を決めないといけない