トライアングル



その後、萩原さんに「送ってく」って言われたけど、さすがにそこまでして貰う訳にも行かない様な気がして、丁寧に断り私達は別れた。



別れ際、私の首に巻かれたマフラーを返そうとすると、


「外したら寒いでしょう!だからそれ貸してあげる。
気が向いたら返して」



って。


『気が向いたら……』って。



けど、彼の優しい心遣いにいつになく温かなものが胸の中に広がって、私はもう胸が一杯で上手く言葉が出ない。



だからただ、こくりと頷くだけで精一杯。



彼はそんな私に再び優しい言葉を紡ぎ出す。



「じゃあ送らないけど、気を付けて帰れよ。

それと、今日は一緒に飯、ありがとう。また、行こうな」


「………」



いつもよりも優しい眼差しを向けられて、私はまたなにも言えないまま顔を赤くして俯いた。


< 15 / 56 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop