トライアングル



その日を境に私は萩原さんの事が益々気になる存在になった。



そしてその気持ちはいつしか『好き』に変わっていた。



そうなるのに時間は掛からなかった。



借りたままのマフラーはなかなか返す事が出来なくて、まだ私の手元にあるけど、


返す時にはこの気持ちを伝えられたらな。なんて思っている。



でも、なかなかマフラーを返すタイミングも気持ちを伝えるチャンスにも恵まれなかった。




そんなある日、ふたりで食事に行ってから暫く経った頃、


再び彼からお誘いがあった。



「ねぇ坂口さん。今度は飲みに行かない?」


「……えっ?」


「坂口さんはお酒飲める?結構お酒、強かったりして」


「………」



お酒なんてまるっきり飲めない。


いや、飲んだ事がない。


仕事の付き合いで多少は飲んだ事があるけど、ビールなんてあんなのが美味しいなんて思えない。



そんな事を考えていると、ふと彼は私の気持ちを読み取ったのか次の言葉を紡いだ。



「飲めなくても大丈夫だよ。今度は何人か人集めたから」


「………」



その台詞を聞き再び驚いた。


今回はその、二人きりではないんだ。



そう思うとやけに悲しかった。


けど、そうさせたのは私なのに……。



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