もう一度抱いて
「はぁ…」


シャワーを浴びながら、私は昨夜の事をひどく後悔していた。


あぁ…、自分が情けない。


会ったばかりの人とのキスに溺れて、身体を許してしまうなんて。


本当にバカだった。


しかも、相手はそれを全く覚えていないなんて。


いや、待てよ?


それならかえって好都合かもしれない。


考えてみたら、あれを全部バッチリ覚えられていたら、それはそれでかなり恥ずかしい。


同じ大学ではあるけど、経済学部は棟が遠いから、多分会うことはないだろうしね。


そうだよ。


お互いなかったことにすればいい。


そして、私も忘れてしまおう。


うん。そうするしかないよ。


ドライヤーで髪を乾かし、洗面台に置いてあるサンプルサイズの化粧水を顔にパシャパシャとつけて、私はバスルームを出た。


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