もう一度抱いて
部屋に戻ると、狭い室内に紫煙が立ち込めていた。


彼は上半身裸でズボンを履き、ソファに座ってタバコを吸っていた。


タバコを挟む細くて長い指。


組まれた長い脚。


床に視線を落とした横顔がやけにセクシーで、思わずゴクリと息を飲んだ。


彼は私に気が付くと、パッとタバコを口から離し、灰皿にタバコを押し付けた。


「俺もシャワー浴びてくる…」


それだけ言って立ち上がると、彼はバスルームへと向かった。


バスルームの扉がパタンと閉まるのを確認すると、私はバッグからメイク道具を取り出し、メイクを始めた。


小さな鏡に映る自分の顔が、なんだかいつもと違って見える。


少しだけ…。


大人の女の顔をしていた。


メイクが終わる頃、ちょうど彼がシャワーから出て来たので、私達は二人でホテルを後にした。
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