もう一度抱いて
全ての事が思い出されると、急激に恥ずかしさがこみ上げて来た。


乱れたシーツに、床に脱ぎ散らかされた衣類。


それらが昨夜の激しさを物語っていた。


「ん…」


ミシッとベッドが軋み、男が私のいる方向に寝返りを打った。


長い前髪の隙間から、瞼がゆっくりと開かれる。


視線がぶつかり、ドキッと心臓が跳ね上がった。


しばらく無表情でボーッと私を見ていた彼だったけど、突然目を大きく見開いた。


「えぇっ?」


ガバッと起き上がり、布団ごと壁に後退りする彼。


「ちょっ、アンタ誰?」


焦った顔で私を見つめるその姿は、なんとも滑稽だ。


つい数分前の私と同じ状態だから、気持ちはわからなくもないけど…。


「覚えてない…かな?」


苦笑いしながら問いかければ、彼は辺りをキョロキョロと見回し始めた。


布団をめくり、自分の恥ずかしい姿を確認すると、一気に顔が青ざめていった。


「ま…じかよ…」


愕然とうなだれる彼。


はは…。


この様子じゃ、全く覚えていないみたいだな…。


とりあえずもうここから出ないと、時間的にまずいよね。


「あの…。ちょっとあっち向いててくれる?
私、シャワー浴びて来たいの」


「え?あ、あぁ…」


彼が壁に顔を向けたのを確認すると、私は床に落ちた自分の衣類をかき集めて、バスルームへと急いだ。

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