もう一度抱いて
お風呂と歯磨きを済ませると、私はノートとペンを持って、スタジオに向かった。


コテツが私を見て、シッポを振る。


そんなコテツに手を振って、私はスタジオの中へと足を踏み入れた。


中に入ると、既にキョウセイが待っていた。


「よう」


「お疲れー」


キョウセイはギターを持って床に直接座っている。


私もそこから少し離れて座った。


スタジオに二人きりなんて、なんだかドキドキしてしまう。


「どれくらい進んでる?」


「それが全然。
あと2曲仕上げないといけないんだよね?
焦ってるよー」


「わかった。
じゃ、Dの曲から先にやろうか」


「うん」


「この前山に登った時、何か思い浮かんだ?」


「あー、ちょっとだけ。
でも、全く意味のないことだよ」


「ちょっとノート見せて」


私はノートを広げて、キョウセイに差し出した。


キョウセイはそれを真剣に見ている。


「あー、これいいね。
星の話。
これを広げていこう」


「広げる?」


「星と恋愛を結びつけるんだ。
星と言えばどういうことを思い付く?」


「うーん」


どうだろう…。


「綺麗だけど、地球からは遠いよね。
手が届かない感じ?」


「なるほどな。

よしっ、テーマはそれで行こう。

思いの届かない恋」


ニッコリ笑うキョウセイ。


思いの届かない恋…か。


私は少し、胸の奥がチクリと痛むのを感じた。

< 185 / 479 >

この作品をシェア

pagetop