もう一度抱いて
気がつけば私は、歌えなくなっていて。


客席がみんな、私に注目していた。


立っていることさえつらくて、倒れそうになる。


その時だった。


舞台袖から亜美が飛び出して来た。


「里桜!過呼吸になってる!

ステージから降りよう!

みんな、後はお願いっ」


そう言って、私を抱えて舞台から降りて行った。


意識が朦朧としていたけれど、ギターの音が一瞬歪(ひず)んだのだけは、よくわかった。


控え室に入ろうとしたけれど、前のバンドさんと次のバンドさんがいるようだったので、亜美は私を非常階段へと連れて行った。


「座って」


亜美に言われて階段に座り込んだ。


息が苦しくて、指先が震えてしまう。


「大丈夫よ、大丈夫だから…」


亜美が隣に座って、背中を撫でてくれる。


私は心を落ち着けて、パニックにならないようにするのに必死だった。


しばらくすると少し落ち着いて来たので、亜美は「お水持って来てあげる」と言って、非常扉を開けて控え室へと向かった。
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