もう一度抱いて
お風呂から出てパジャマに着替えた私は、キッチンでお湯を沸かした。


眠れない人のためにブレンドされたハーブティーを飲むために。


あまり私には効果がないけれど、気休めで毎晩飲んでいる。


効果を期待するというより、この香りが好きで…。


マグカップにティーバッグを入れ、お湯を注ぐと、瞬く間にキッチンにハーブの香りが広がった。


優しい、甘い香りがする。


どことなく、キョウセイに似ている気がした。


そんなことを思いながら、部屋に戻ろうとした時、


ピンポーンと玄関のインターホンが鳴った。




こんな時間に誰…?


カップを静かにシンクの上に置き、忍び足で玄関まで歩く。


恐る恐るドアスコープを覗くと…。


ドクン、と。


久しぶりに心臓が跳ね上がった。



ドアスコープの向こうに見えたのは…。



会いたくて。




会いたくて。




会いたくてたまらなかった、




愛しいキョウセイの姿だった。
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