もう一度抱いて
「こんな当たり障りのない綺麗な文章じゃ、聴いてる人に何も届かないんだ。
それにアンタ、この歌詞で一回でも歌ってみたのか?」


「え…?」


ううんと、首を横に振った。


「試しに歌ってみろよ。多分、相当違和感を感じるはずだぞ」


「違和感?」


「あぁ。歌っていて気持ちがいいとは思わないはずだ、絶対」


絶対と言われて、なんだか悲しくて視線を落とした。


「まぁ、初めてだもんな。わからないのは当然だよな。
俺も悪かったんだ。書き方を全く教えてなかったから…。俺も一緒に考えるからさ、これもう一回書き直してくれないか?」


「えぇっ!」


せっかく書いたのに~。


でも確かにレポートを書いてるような感覚だったし、これじゃあ聴いてる人もつまらないに違いなかった。


「わかった。書き直す」


私がそう言うと、彼の動きがピタリと止まった。


「……どうかした?」


きょとんとしている彼が不思議で問いかけたら、彼は長い前髪をスッとかき上げた。

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