もう一度抱いて
「亜美…」


突然の亜美の登場に、京香は戸惑っているのか、少し目を泳がせた。


「久しぶりね、京香」


そう言って口角を上げてはいるものの、亜美は目が笑っていない。


「亜美も…ライブ見に来てたのね」


上目遣いで問いかける京香。


「見に来てたって言うか。彼氏と里桜がライブに出るから、サポートしてたのよ」


「彼氏…?」


「2TRのドラム、私の彼氏だから」


亜美の言葉に、京香は目を見開いた。


「私がメンバーに里桜を紹介したの。

ボーカルが抜けて、彼ら困ってたから。

里桜が京香にバンドに加入したって言わなかったのは、磯村君が京香に知らせてるだろうと思ったからよ。

別に隠してたわけじゃないわ」


少し金色がかったショートカットの髪を揺らしながら、亜美は冷たい口調で言った。


「亜美ちゃん、どうしたの?」


亜美の後ろから、小山君が顔を出す。


「あ、小山君。高校の同級生に偶然会ったから話してたの」


亜美の言葉に、小山君が京香をチラリと見た。


「同級生?

あれ?キミはあの時の…」


ビックリする小山君に、京香はペコリと頭を下げた。


「清水先輩と同じ会社の方ですよね?5月のライブの時、控え室に差し入れを持って来てくれた。

もしかして今日も、僕らのバンドのライブをわざわざ見に来てくれたんですか?」


小山君に聞かれ、京香はなぜか苦笑いをした。


「トモオ君、何も言ってくれてないのね…」


そう言って、京香は悲しそうに目を伏せた。


その時だった。


「京香…?」


中低音の優しい声が響いた。
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