もう一度抱いて
キスを交わしながら、彼は肩下まである私の髪の毛に細長い指を何度も通す。


その感触が心地よくて、さらに身体を寄せた。


お互い息が乱れ、興奮しているのがわかる。


「ねぇ……」


キスの合間に声をかけてくる彼。


「な、に……?」


夢中になりながらも、なんとか答えた。


「行こうか……」


囁くような中低音の優しい声。


行こうか?


行こうかって……?


「どこ、に……?」


頭がボーッとしているせいか、思考回路が追いつかない。


そのままキスを続ける私達。


しばらくすると、彼が静かに口を開いた。


「……ホテル」


まさかの言葉に耳を疑った。


初めて出会った人とそんなところに行けるわけない。


そう頭ではわかっていても。


このキスをやめたくなくて。


私は唇を重ねたまま、コクンと頷いてしまったんだ……。
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