予言と過去
大聖堂に入り、私は息を飲んだ。
村人が集まり、ざわざわと話し声が聞こえる。その中心には大爺様と、救出隊のメンバーが居り、少し離れた所に、1人の少年が立っていた。
それは、記憶よりも成長した――ライネスの姿だった。
「ライネス!?」
思わず叫ぶと、大爺様が私とリーを手招きした。
大爺様の隣に立ち、ライネスを見つめる。
頭と顔には乾いた血が こびり付き、服と言うよりは布を纏っているような格好を している。さらさらと綺麗だった彼の金と黒のメッシュの髪は、肩の辺りで乱雑に切られており、黄色の両翼は無残に折られていた。
そして、彼の紅い瞳に、光彩は無かった。
ライネスは何かに怯えるように自らの肩を抱き、じっと自分の爪先を見つめている。
「……救出隊に素直に付いて来てくれは したのだが、決して触らせては くれないのだそうだ。リホ、其方は彼の友達だと言っていたな?」
大爺様の言葉に頷き、司祭に目を向ける。
「司祭様、お手数ですが、人払いを。」
私の言葉に司祭達は頷き、渋る村人と救出隊のメンバーを、大聖堂の外へ追い出した。
大広間には、大爺様、リー、私、ライネスだけに なる。
彼は、怯えてるんだ。
昔、虐められていた時と同じ。だから、人払いを頼んだ。