予言と過去



「ライネス。私が誰だか解る?」



その言葉に、ライネスは ゆっくり顔を上げる。どんよりと曇った瞳が、私を見つめた。



「……リ……ホ……?」


「そうだよ。ね、だから大丈夫。」



そう言いながら近付き、回復(ヒール)を掛けようと、そっと腕を触ると。



「っ!!」



ライネスの躰が びくんと跳ね、彼は身を屈めて嘔吐した。



「ライネス!?」



慌てて背中を摩ろうとして、私は動きを止める。



彼の躰に残る、無数の傷跡。どれだけ酷い事を されたのだろう。



彼は恐らく、周りの人 全てを恐れてる。拒んでる。



肩で息を しながら、ライネスは口を開いた。



「……御免、リホ……俺……っ。」


「大丈夫、解ってる。」



躰が反応してるだけだよね。私は貴方の友達だよね……?



「触っても、良い?」



私の言葉に小さく頷く彼。



回復(ヒール)を掛けている間、彼は ぎゅっと瞳を閉じて、己の恐怖と闘っていた。

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