予言と過去
僕の願いを聞いた悪魔は、両手を天に向かって広げた。
それと共に、高く五月蝿い耳鳴りが、僕を襲った。
その中で。
「何やってるのライネスっ!!」
聞き慣れた、綺麗な声が聞こえて、僕は後ろを振り返った。
「……お姉ちゃん。」
「馬鹿!」
お姉ちゃんの顔は、何故だか哀しそうに歪んでいたけれど、彼女は それでも、僕が召喚した悪魔を、きっと睨み付けた。
「呼び出して早々 悪いけど、還ってくれるかしら。」
その言葉を聞いた悪魔は、妖艶な笑みを浮かべた。
「誰が、てめェの言う事なんか聞くかよ。」
「ライネス、こっちに!」
悪魔の答えに、それ以上の会話は無意味だと悟ったのか、お姉ちゃんは僕に向かって両手を真っ直ぐに伸ばした。
……ああ、そうか。僕は まだ、独りじゃなかったんだ。
今更 気付く。
もう、遅いのだけれど。
「そんな訳 在るかよ。あいつは、家族だから お前に手を差し伸べてるだけだ。他の龍族と同じ立場だったら、皆と同じように、お前を罵るさ。」