予言と過去



聞いてはいけない、悪魔の囁き。でも、まだ子供で幼い僕は、その言葉を信じたくて堪らなくなるんだ。



召喚した悪魔に勝手に記憶を見られた事にも気付かずに、僕は戸惑い、躊躇した。



ずっと一緒だった お姉ちゃん。
召喚したばかりの悪魔。



どっちを選べば良いのか、解らなくなってしまったんだ。



「ライネスっ!!」



お姉ちゃんは僕に向かって真っ直ぐ走って来て、その腕が、僕を包み込む。その瞬間、お姉ちゃんの口から、真っ赤な液体が飛び出した。



「……生きて。」



悪魔に攻撃された お姉ちゃんは、たった一言だけ囁いて、そのまま地面に崩れ落ちた。



「さぁ、行こうぜ、ライネス。」



名乗っていない筈なのに。



そんな事にも気付けず、僕は差し伸べられた悪魔の手を。



そっと、握った。

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