予言と過去



目を開けると、其処は灰色の空間だった。



ヴィルと名乗った あの悪魔の手を取って、連れて来られた場所は、地界だった。



其処に僕達 龍族は皆 集められて、閉じ込められた。



そして、数時間に1人ずつ、悪魔に連れられて牢屋から出て行く。



気が付けば、残っているのは僕だけに なっていた。



暫くすると1人の女性が来て、僕の腕を掴んで強引に立たせた。



ウィロアと名乗った彼女は、僕を引っ張り、入り組んだ廊下を すたすたと歩いて行く。



「……ちょ……待って……くだ、さい……何処へ……。」


「行けば解るわ。」



からからに渇いた喉から必死に出した質問に、彼女は簡潔に答えると、扉の付いていない大きな部屋に僕を引き摺り入れた。



目の前に広がる光景を見て、息を飲む。



其処に居たのは、10人程の悪魔と、沢山の龍族の死体だった。皆、血を吐いて、白目を剥いて、床に横たわっている。



「……うぇ……っ。」



思わず口を押えて吐くと、ウィロアは僕の腕から手を離し、僕が召喚したヴィルと言う悪魔の隣に立った。支えを失った僕は、よろよろと後退った。



「ヴィル様、仰せの通り、この少年を最後に連れて来ました。」


「ああ。」



自分に対し恭しく頭を下げたウィロアに1つ頷くと、ヴィルは僕に向き直った。

< 74 / 89 >

この作品をシェア

pagetop