予言と過去



それから、男達に連れられ、俺は空界へと戻った。



かつて龍族が住んでいた村を男達は避けてくれた。そして、昔 俺が翔ぶ練習を していた森の近くに在る村へ入り、大聖堂と呼ばれている建物へ、俺を招き入れた。



中には村人が沢山 集まっていた。かつて俺を虐めたり罵ったりしていた人の顔を見付けて、躰が震えるのが押さえられなかった。



ざわざわと ざわめく彼等と、俺を実験台だと笑ったヴィル達の顔が重なった。



また、辛い記憶がフラッシュバックする。もう此処は安全だと、解っているのに。



いや、安全では無いか。俺が悪魔を召喚したと村人が知ったら、また昔と同じように、蔑まれるのか。


俺の居場所は、空界にも、地界にも、無いのか。



「ライネス!?」



自分の名前が呼ばれたような気がした。けれど、頭が ぼんやりして、何も考えられない。



唯、逃げ出して来た時と同じように、自分の肩を抱き、土で汚れた裸足の爪先を見つめた。



唐突に、村人と俺を連れて来てくれた男逹が、大聖堂の広間を出て行った。誰かが人払いを したようだ。


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