予言と過去
翌日。
大聖堂の大広間に、沢山の村人が集められていた。
大広間に行くと言い出した俺をリホは止めたが、俺は それを振り切り、部屋の外から こっそり中を覗く事に した。最初は止めたリホと、途中で会った大爺様の孫のリーと言う少年も、何故か俺と一緒に中の様子を窺っていた。
確かに、リホの言う通り、部屋で安静に していた方が良いのかも知れない。
それでも俺は確かめなければ ならなかった。
これから この村で生きて行く俺を、周りは どう思うのかを。
昨日 俺が伝えた事――地界に連れて行かれた龍族は皆 殺された事を、大爺様は村人に伝え、一端 口を閉じてから再び開いた。
「それと、儂はライネスを養子に迎え、大聖堂で暮らさせる事に した。」
その言葉に思わず息を飲んだ。そんな話は聞いていないし、唯の庶民である俺が、神聖な大聖堂で暮らすなんて、想像も していなかったからだ。
驚いたのは俺だけではなかった。聞いていた村人から、反対の声が沸き上がった。
「何故あんな餓鬼を神聖な大聖堂に住まわせるんだ!」
「そもそも、龍族の生き残りを この村に置いといて大丈夫なのか!? また悪魔が襲って来たら どうする!」
「大体あいつは龍族の役立たずだった筈だろう!?」
様々な罵声に、思わず耳を塞ぎたくなる。
もう、俺の存在を肯定してくれていた家族は居ない。大切な友達なんて尚更、最初から居なかった。俺を龍族の役立たずだと覚えている人が居たと言う、苦い事実が残っただけ。
それでも俺は、耳を塞がなかった。その場から逃げたい衝動を抑え、必死に抗議する村人達を見つめた。
俺が犯した大罪。それが、この結果を、現実を生み出した。
だから、逃げては いけないと思った。
俺は、生きて行く。
この世界で、独りで。
「静まれっ!!」
不意に大爺様が上げた声に、大聖堂は一瞬にして静まり返った。