予言と過去



「お前達は龍族の事を どう考えているのだ!? 彼等が悪魔と戦ってくれなければ、今 儂等が此処で こうしている事等 無かった!


彼を この村に置く事で、悪魔が再び襲って来るかも知れんだと? 命の恩人の族の生き残りを、お前達は迫害するのか!


あの子の事を何だと思ってる!? あの子は まだ子供なんだぞ! たった10歳で天涯孤独に なった者の気持ちを、お前達は理解 出来ないのか!」



声を荒げる大爺様の姿に、村人達は口を噤んだ。



「……まだ反対する者は居るか?」



大爺様の問いに答える者は居ない。



そうして俺は大爺様の養子として大聖堂で暮らす事に なり、リーの隣に個室を宛がわれた。



1度は独りで生きると決意したのに、そんな決意等 簡単に折れた。



毎夜 見る悪夢。夢の中で家族や他の龍達に、罵られる夢。



部屋から出れば司祭達に冷たい目で見られ、食事に ごみを混ぜられる。



外は きらきらと輝き過ぎていて、俺が居るのは酷く場違いな気がした。



何故 自分が生き残ってしまったのかと言う疑問。大罪を犯した後悔。そればかりが頭を ぐるぐると周り、俺は部屋に閉じ籠るように なった。



リホは巫女として極力 俗世と関わっては いけないらしく、1日1回、数分 会いに来るだけだったが、隣の部屋に居るリーは、しょっちゅう俺の様子を見に来た。



それも、俺が泣いている時や、自傷を している時に限って。



泣いている時は、何も言わずに隣に座っているだけだった。俺に触れないように注意して。



自傷を している時は、黙って刃物を取り上げて、傷の手当てを してくれた。



自傷を繰り返しても自殺が出来なかったのは、4年前 俺を守り死んでしまった姉に申し訳無いと言う気持ちが在ったからだ。
< 83 / 89 >

この作品をシェア

pagetop