禁域―秘密の愛―【完】
休息所は、人の気配が無かった。
部活をやっている子達もとっくに帰ったのだろう。
ただ………
「桐谷君………学校、閉まらないかな?」
「大丈夫だ。先生達が言った閉門の時間帯まで時間はある。それに………、今すぐに綾瀬に話したい事があるんだ」
桐谷君は、私を見つめる。
その瞳のあまりの熱っぽさに………、私の心臓はドキドキし始めた。
そして………
「きゃっ!」
私は、桐谷君に抱き寄せられた。
ーーーいつもと違う………。
すごく、すごく、ギュッと強く抱きしめられる。
私は、そんな桐谷君の体温をもっと感じたくて、抱き締め返した。
「藤咲に………何された?」
「あ………」
私は一瞬、答えるべきか迷った。
けれど、あの場面を見た桐谷君に今更、何も言葉は取り繕えない。
正直に言うしかないよね………。
「首筋………、首筋や胸元にその………、っえ?」
私がそう言った瞬間、桐谷君は私の制服の襟元を広げ、ボタンも何個か外す。
「桐谷君………!?」
恥ずかしい………。胸元まで、見えてしまっている。
そして、更に私は、首筋や胸元に何個か赤い痕があることに気が付いた。
まさか、これ………藤咲君が?
「やっ………!!」
ーーー見られたくない!
桐谷君に他の男子に触れられた痕なんて、見られたくない………!