禁域―秘密の愛―【完】
「………君は、さっきの?」
その時男性が、私の顔を見た。どうやら気が付いたようだ。
「あ………あの、さっきはすみませんでした」
「瞳………?」
私はどう会話したらいいのか分からず思わずそう言ってしまった。
こんな時、自分の発想力の乏しさを恨んでしまう。
「どうして、啓史兄さんが瞳のことを………」
「ああ。さっき、偶然にもぶつかってしまってね。
それにしても………すごく可愛い子だね。それに、凄く律儀で純粋そうだ。
なるほど。巧が手放したくないと光おじさんに言ったのも分かるよ。
………他のことは全て受け入れたんだろ?」
「他の事………?」
一体、他の事ってーーー?
「………啓史兄さんには、関係のない事だ」
「おいおい、その言い草は無いだろう。………将来、桐谷の企業、団体を全て受け継ぐ君を補佐するのはこの僕だ」
「ーーーえッ!?」
男性の言葉に私は驚いた。
巧が桐谷家の企業と団体を受け継ぐ?
つまり………、巧が桐谷商事の次期社長?
ーーーどうして?
あんなに………、桐谷家のことを嫌っているはずなのに。