禁域―秘密の愛―【完】
「っ、啓志兄さん!」
すると、巧が声を張り上げた。
とても鋭い目で男性を睨みつけている。
その一方で私の頭の中は混乱していた。
男性の正体が分からないのと、なぜ巧が桐谷商事を継ぐことを承諾したか理解できなかったからだ。
「あ、彼女はもしかして知らなかったのか?ごめんね。君はよく事情が分からないだろう?
大体、巧。一体、自分のことをこの子にどこまで話してーーー」
「………れ」
「は?」
「分からないか?帰れって言ってるんだよ。啓志兄さん………」
巧は、まるで感情を押し殺したように低い声でそう男性に告げた。
「………ご立腹か。せめて、彼女に自己紹介だけさせてくれよ。そしたら、去ってあげるからさ。
ということで、僕は安藤 啓史(あんどう けいし)。
22歳で、巧との関係は、彼の父親と僕の母親が兄妹。
つまり従兄弟ってことだよ。さて、君は?」
「あ………、綾瀬 瞳です。巧君とは同じクラスで、その」
「ーーー恋人、ってわけだ?」
いきなり、直球を投げられたので、顔が赤くなってしまった。