禁域―秘密の愛―【完】
ーーー狡い発言だった。
光さんは全て見越したうえで言ったのだ。
巧が………、情に厚い人間であることを。
「………俺は、知ってた。他の人間の都合で人生を台無しにされた母親の姿を。
だから………、もうこれ以上見たく無かった。
誰かのために人生を狂わされる………そんな人達の姿は。
それを、あの男は知ってたんだ。
本当に勝手だ。どこまでも………俺を縛り付けた」
「………っ、巧………」
それは………つまりーーー
「俺は………桐谷商事を継ぐよ」
巧は………、震える声でそう言った。
この人は本当に………、どこまで1人で耐えてきたのだろう。
桐谷家にーーー、狂わされていく。
がんじがらめにされる自分の未来を………。
「巧、どうして………」
私の目には、涙が溢れ出した。
まだ、ほんの17歳で巧が背負ってきたものの辛さを知り、それにたった一人で闘ってきた彼の姿があまりにも、私の心を締めつけた。
「なんで、瞳が泣くんだ?お前を泣かせる為に言った訳じゃないよ………」
巧はそっと、私を抱きしめた。
私はその腕の温かささえも、どこか悲しく思え、溢れる涙を止められなかった。