禁域―秘密の愛―【完】


「ちょっと…………ずぶ濡れじゃない!?」

スーツ姿の彼は、ずぶ濡れだった。
身体もよく見ると震えているようだった。

「あぁ………優斗さんに、頼まれた書類を持ってきたんだが。途中で雨にやられた。今日の天気予報のこと、すっかり忘れてたんだ。午後から土砂降りだって」

「そんな………大丈夫なの?」

「書類のことなら鞄の中のケースに入れてたから大丈夫だ………安心しろ」

「は!?違うよ!!」

私は、思わず声を張り上げた。

違うよ…………。私が、心配してるのは…………

「私が心配してるのは…………巧だよ。こんなに寒い中、雨に濡れて…………体調崩したらどうするのよ?バカっ…………」

いつもそうだ。巧はいつも、自分の事は全部後回し。
こんな時くらい、書類の心配じゃなくて自分の心配をしてほしかった。

「バカ、ってお前な…………」

巧は、はぁっとため息をついた。そして少しだけ微笑んで

「…………中々言うようになったな、瞳」

そう言ったんだ…………。



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