禁域―秘密の愛―【完】


巧は……………本当に、遠い所に行ってしまうんだ。


私の手の届かない…………所へ。



「そ…………っか。そうなんだ………」

私は、食器を洗っていた蛇口の勢いを強くした。

そうすることで、優斗に自分の声が震えているのを悟られないように。
幸い、優斗は前をみてテレビを観ているから私の表情には気付いていない。

「あぁ。二人が結婚する時は、俺なりに精一杯祝うつもりだ。なんて言ったって、朝香が巧君に、8年前一目惚れをして、想いを伝えて巧君がそれに応えたっていうことだ。それからずっと付き合ってるんだもんな。見事な純愛だよ。家の事は関係がないらしい。あの二人の婚約は」

「え……………?」

優斗の言ったことに私は違和感を覚えた。

違う…………家の事は、関係がある。元々は、朝香さんの実家である桜庭家が桐谷商事に資金援助をする代わりに、朝香さんと結婚を前提にした付き合いをするという取引があったから…………巧は、私と別れたんだ。

れっきとした、政略結婚。


まさか、優斗は…………本当のことを知らないの?





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