禁域―秘密の愛―【完】
まるで、さっきまでの口調とは違う巧に私は驚いた。
相手のことをちゃんと気遣っている、そんな言動に上品さも備わっている。
そういえば、巧とはプライベートの時だけしか会ってなくて…………こういう公的な顔というのは知らなかった。
でも、きっとこれも…………巧が小さい頃からずっと培ってきたもの。
桐谷家の跡取りとして、恥じないように。気品のある男性になるように振舞ってきたんだ。
「巧…………」
こんな顔もあるんだな。なんだか少しだけ新鮮に思えた。そしてこれは長年の巧の努力の賜物だ。
「直ぐ、お部屋にご案内致します。お
荷物お預かり致します」
「はい。ありがとうございます。…………おい、行くぞ?」
「…………」
「…………おい?」
「へ!?」
やだ………私。巧が呼んでたのに全く気付かなかった。
「…………ボーーーーっとするなよ?ただでさえお前は危なっかしいのに」
「ご、ごめん」
「ったく………」
巧はまた呆れたようにため息をついた。