禁域―秘密の愛―【完】
それにしても巧も女将さんも何をそんなに慌てていたんだろう…………。
「…………で、お前はどうする?どこに寝る?」
そう思っていた時、巧がまた話しかけてきた。
「寝るって、え?寝室でしょ?さっきから変だよ?巧」
「変なのはお前だよ…………」
「っ、え!?な、何でっ?」
「…………はぁ。さっきの言動といいその鈍感ぶりは昔のままだな。本当に」
「…………え?」
「いいか?今日、俺とお前は………ここしか過ごす場所が無い。だから、寝る場所をどうするかって聞いてるんだ。言っとくが寝室は一部屋しかない」
「…………あっ!?」
巧にそこまで詳しく言われて初めて………私は、事の重大さに気が付いた。
そ、そうだ………。今夜は巧とここで、2人きりなんだ…………!! しかも、寝室は一部屋しかない…………。
だから、巧も女将さんもあんなに慌ててたんだ…………。
「っ、ご、ごめんね!巧っ…………。私全然そんなこと考えてなくて…………」
「いや…………もうそれはいい。それより、居間の左隣の襖を開けると寝室だ。……布団が隣に二枚敷いてあるがお前が気にするなら俺は布団を移動させて居間で寝る。だから、どうするかと聞いたんだ」
「どうする、って…………」
私達は、もう恋人同士じゃない…………。
だから、やっぱり隣同士で寝ることは変…………だよね。
「…………っ」
この時、私は改めて巧を遠くに感じた。
昔は当然のように、近くにいて………抱きしめてくれたのに。
「…………っ、その方が、私も、いいかな…………」
今はもう…………許されない。
それが、凄く切なくて………私は精一杯強がってそう言った。