禁域―秘密の愛―【完】
愛ちゃんにいくら、私にはいいところがあると。
だから、周りは関係なく桐谷君の傍にいていいんだと言われても………、現実を突きつけられればすぐに臆病になる。
怖い………。
好きになればなるほど桐谷君の傍にいていいのかわからないーーー。
「………それで、俺のこと避けてたのか」
静かにそう言う桐谷君に私は頷いた。もう、涙は止まらなかった。
その時ーーー
「っ………?」
桐谷君が私の頬にそっと触れ、その大きな手のひらで私の涙を拭う。
そしてーーー
「桐、谷君………?」
私をそっと抱き寄せた………。
「き、桐谷君っ………!?」
どうしよう、どうしよう………っ!
また私、桐谷君に抱きしめられてる………!
「………ごめん。俺も、本当に勝手だ」
「っ、え………?」
「こんなに………、綾瀬が俺といることで苦しんでる所を見てるのに。
けど俺は………、綾瀬を離したくないんだ。俺の傍にいて欲しいんだ………」
「桐、谷君………」
その言葉を聞いた瞬間、一気に悲しみが薄れてゆくのを感じた。
そして………、気付いた。
私は、本当は桐谷君のその言葉が欲しかったんだと。
桐谷君が、私のことを本当に必要としているか不安で、その不安を促すように嫌がらせが始まった。
愛ちゃんの説得も、一時の気休めでしかなかった。
だけどーーー
「いていいの………?桐谷君の傍にいていいの…………?」