禁域―秘密の愛―【完】
明らかに動揺を隠せていない朝香さん。
朝香さん、やっぱり何か知ってる………?
「朝香さん、何か知ってるなら話して下さい………!お願いします………!」
「っ、巧は………。巧は。一ヶ月後にブラジルにある桐谷商事の海外支社へとばされることが決まったの」
「…………え…………?」
ブラジル。思いもよらぬ地名に私は耳を疑った。
しかも支社だなんて………次期桐谷商事の社長の椅子が約束されている巧が行くような場所じゃない。
「桐谷商事がかつて一度手放した現地の小さなエネルギー会社があるの。そこは第二次世界大戦後、まだ海外ではその名を馳せてなかった桐谷商事にとって、海外進出の第一歩となった取引先だった。 だから先代の経営陣はそこの会社を大切にしていた。けれど、現社長ーーー、つまり巧のお父様があまり利益のでなかったその会社を切り離してブラジル大手のエネルギー会社と替わりに契約をした。………ただ、問題はここからなの。桐谷商事が一つの主な取引先だったそこの会社は、桐谷商事との契約が途絶えた事で一旦倒産しかかったの。従業員の解雇もかなりあったと聞いた………」