禁域―秘密の愛―【完】

「朝香さん………?」

「………許せないの」

「………え?」

朝香さんは震えた声でそう呟いた。その目にはまだ薄らと涙が浮かんでいた。

「巧がブラジルに行く事を影で進めていた優斗君も、啓史さんも、桐谷 光も。そして何より………止めれなかったあたしも」

「でも、朝香さんはいつだと言うことは知らなかったんでしょう?」

一ヶ月先だと聞かされていれば、もし巧のブラジル行きを止めようとしてもまだ時間があると思い込んでいたのも無理はない。

「ええ。確かに知らなかったわ。でも、やっぱり直ぐに止めなかったということは………巧に対して恨みの気持ちがあったのよ。あたしを選ばなかった罰だと………そう、思ってたんだわ。きっと。だから心から愛した男を危険な目に遭わせようとした自分を………あたしは許せない」

「………朝香さん」

「あなたから、卑怯な手で巧を奪ったのに今度は巧を傷付けようとしている。その結果で、今こんなにもあたし自身苦しいのよ………そんな自分に嫌気がさす」
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