禁域―秘密の愛―【完】
「巧っ…………」
あぁ…………思いもしなかった。
高校の時、巧と悲痛の別れを遂げた時は。巧が朝香さんに私に対する気持ちを伝えてくれる。そんな日が来るなんて。
「…………そう。ーーーー巧。あなたの幸せは…………瞳さんといることなのね」
朝香さんは、そう言うと暫くの間俯き、何も言葉を発さなかった。
けれど…………
「…………巧、一つだけ聞いてもいい?」
飛鳥さんは潤んだ瞳で、巧を見つめて…………そう言った。
それは、抑えきれない悲しみと…………
僅かな明るい希望が交差するそんな表情だった。
「…………あぁ」
「もし…………もしもよ?あなたが、瞳さんと出会っていなくて。 桜庭 朝香という存在だけを知っていたら…………あなたは、あたしを見ていてくれた?」
「朝香…………」
今度は巧が口を閉ざす番だった。けれど、巧は直ぐさま朝香さんの方を真っ直ぐに見て
「俺は、瞳が初恋だ。瞳と出会う前は誰一人として女性として意識をしたことはなかった。…………飛鳥。もしお前だけに出会っていたら俺は初恋を知らないままお前と結婚をしただろう。だが最初は形から入っても、お前の負けず嫌いなところや、家柄の枠に囚われることなく日々成果を認めてもらおうと一生懸命業務をこなす姿。そして、何よりお前の俺に対する気持ちは本当に真っ直ぐで………初恋を知らない俺が惹かれるには充分だよ。朝香、お前は良い女だ」