禁域―秘密の愛―【完】


「…………っ、巧っ…………」

朝香さんは、巧の言葉を聞いた途端その場に崩れ落ち大粒の涙を流した。

「っ、あたしは巧を、あなたの事を本当に愛していたわ…………。けど、いつも不安だった。あなたの傍に婚約者としていてもいつも………あなたは、私自身を見て隣にいてくれるのでは無くて、私自身を見つめることも無くて………私が桜庭の一人娘だから。あたしが、巧を高校の時卑劣な手段でがんじがらめにしたから、いるんだって………思ってたから。それでもいいと自分から仕向けたのに………不安になるなんて笑っちゃうでしょ?」

「朝香さん………」

改めて飛鳥さんはずっと怖い思いをしてきたのだと思った。

巧へ「愛情」は届かなかった。だから「財」を差し出して巧を私から離し手に入れた。 きっと最初は朝香さんもそれで満足していたんだ。

そこに「愛情」があるか不確かだとは言え巧を傍に置くことができたのだから。

けれど…………


「…………朝香、俺はお前を愛することはどうしても出来なかった。お前は充分、良い女だったよ。けれど俺には既に………瞳がいたから。 瞳は俺にとってどんなに良い女が現れても替えられないかけがえのない存在なんだ………だから朝香、お前は何も悪くない。きっと………もうどうすることも出来なかったんだ。恋愛に関しては………俺が他の誰かを愛することは。瞳と出会った時から」



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