禁域―秘密の愛―【完】
「桐谷君は、どうしてこの映画を観たいって思ったの?」
感動ものって、男子からしたらあまり興味のないジャンルだと思うんだけど、違うのかな?
「ああ。この映画の犬、昔、家で母親と飼ってた犬とよく似てるんだ。
人懐こくて、小さくてな。婆ちゃんもよく世話してた。………それで、懐かしくなって観たくなった」
桐谷君はそう言って笑った。桐谷君のお母さんの話を聞くのは初めてだった私は、なんだか新鮮な気持ちになった。
「桐谷君のお母さんか………。きっと、素敵なんだろうな………」
私が思わずそう呟くと、桐谷君はフッと微笑して
「………今は、もういないけどな」
静かな、でもどこか寂しそうな音色でそう呟いた。
「………え?」
今は、もういない?
一体どういうこと………?