禁域―秘密の愛―【完】
…………なんだか、嫌な予感がする。
この電話を取ってしまったら、何かが消えてしまいそうなーーーー………。
けれど、電話を取らなければ今、私が感じている胸騒ぎの正体がハッキリとしない。
取りたくない………、だけど………取らなければならない。
その気持ちだけで、私は通話ボタンを押した。
「…………はい。 綾瀬です」
「…………綾瀬君? 桐谷だ」
「はい………」
「今日が、本番という時に何だが………、君にどうしても今すぐ伝えなければならない事がある。 大丈夫かね?」
「伝えなければならない事………?」
私がそう問い返すと、桐谷 光は黙り込んだ。
けれど………その瞬間は本当に一瞬だった。
「…………巧が。 ブラジルで、アテラ社からの刺客から胸を刺され………意識が戻らないそうだ」
「…………は?」
その…………言葉を聞いた途端、 私の今見えていた景色が………何も見えなくなった。
色を無くし………何も見えない。
ただ………一体全体、桐谷 光は何を言い出したのだろうと。
ただそれだけを思っていた。