禁域―秘密の愛―【完】


「奇跡みたい………」

それを思うと出てくる言葉は………それしかなかった。



「あぁ。 ………本当だな」

そう言うと、巧と私はもう一度微笑みあった。



「ーーーー そう、それだ」

「えっ………?」

そして、今まで黙って話を聞いていた桐谷 光が口を開いた。

「後で、 アテラ社の社長から正式に契約を結ぶと通達があった時………私は驚くしかなかった。 まさか、本当に巧と瞳君の気持ちが………彼の心を動かすとは思いもしなかった。 ………私が昔した酷い仕打ちも彼は同時に受け入れてくれた。あんなに人情のある息子を育てたのだから、お前も捨てたものじゃないだろうと」

そう言うと桐谷 光は眉を伏せた。

………もしかして、彼も何十年と時が経ち………、気付きかけてたのかもしれない。

アテラ エネジア社にした仕打ちがどんなに酷く彼らに深い傷跡を残していたかを。


「………アンタ、そんな事を思ってたのか?」

「まぁな………。 あまりに馬鹿正直に、母のためだ、恋人のためだと動く息子を見てたらそうなってきた。 ………私も、歳を取ったな」


「父さん………」

そう言った巧の声が………少しだけ震えていた。
< 672 / 714 >

この作品をシェア

pagetop