禁域―秘密の愛―【完】
「綾瀬………。ごめん。俺、家に帰らないといけなくなった」
「え………?」
「実は今、少し家族と揉めてるんだ。
父さんが今日の午後しか家にいなくて、そのことで話があるから帰れと言って聞かない。本当に………、悪い」
「そ、っか………」
桐谷君………帰っちゃうんだ。
せっかく初めて、2人で会えたのに。
まだ………何も言えていないのに。
「気をつけてね………」
でも、そう思う私も何も言う勇気がない。
だから、桐谷君を止めたりする権利なんてないよね………。
その後、しばらく沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは桐谷君だった。
「………話、戻していいか?」
「えっ………?でも桐谷君、ご家族が待ってるんじゃ」
「ああ………少し待たしても、何も問題ない。それに俺は、綾瀬に言いたいことを言い終えてない。
だからせめてそれを言い終えてから帰りたい」
桐谷君はそう言うと、私を見つめた。
それは吸い込まれそうなほど綺麗な瞳だった………。
ああ、私はいつもその瞳に囚われるんだーーー。
「俺、さっき言ったよな?………綾瀬のことを彼女だって」
「う、うん………」
桐谷君がその話を持ちだした瞬間、2人の間に何とも言えない緊張感が生まれたのを私は感じた。