禁域―秘密の愛―【完】
「………いや。でも、瞳ちゃんに心配かけたくなかったんだろう。あの子は不器用だから」
「おばあちゃん………」
昔の桐谷君を、私は知らない。
だけど今、桐谷君が私といることで、そんな笑顔を見せるようになってくれたならすごく嬉しい。
けれど………、桐谷君が話していない"桐谷家"のこと。
それがきっと、桐谷君が私に本当の気持ちを言う前に解決しなければならないことーーー。
桐谷君………何を抱えてるの?
何と………戦っているの?
「私に………何かできることないのかな?」
桐谷君のために、何かしたいよ。
いつも待っているだけなんて、守ってもらうだけなんて。そんなの嫌だ。
「………瞳ちゃん。巧は、瞳ちゃんといることですごく癒されているよ。
私はあの子を小さい頃から見ているんだ。だから、わかる」
おばあちゃんは、フッと私に微笑すると話を続けた。
「きっと時が経てば………、巧は、瞳ちゃんに話してくれるだろうけど。
私から少し言えるとしたなら………、巧は、私の一人娘、菊谷 瑞歩(きくや みずほ)の息子だよ。
瑞歩は、現桐谷商事社長………つまり巧の父親である桐谷 光(きりたに ひかる)の愛人だった」