禁域―秘密の愛―【完】


桐谷君が………、愛人の子ども?


「うそ………」

思わぬ事実に私は驚愕するしかなかった。

「驚かせたね。….……でも、これが本当なんだ。巧は、今はある事情で桐谷の家に引き取られているがね。
生まれてから、中学に入学するまでは、菊谷 巧としてここに住んでいたんだ」

「ある事情………?」

「それは、巧に聞くといい。あまり、喋ると巧に怒られそうだからね。
それより、瞳ちゃん。あんたは、さっき巧のために何かしたいと………そう言ったね?」

「はい………」

私だって、桐谷君が家の事情で苦しんでいることがあるなら、それを和らげたい。

どんなに小さな力だったとしても………、私だって桐谷君を守りたい。

「さっきも言ったけれど、巧は、瞳ちゃんといると本当に良い笑顔になる。
表情もどこか緩くなって、安心しきったような顔になる。
癒されているんだ。だから、なんていうかね。ただ………傍にいてあげるだけでいいんだよ」

「え?」

「瞳ちゃんの存在そのものが、巧の癒しになっている。だから、瞳ちゃん。巧の傍にいてほしい。願わくば、ずっと」

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