禁域―秘密の愛―【完】
「桐谷君ッ………!!」
私は今までの恐怖と、桐谷君が来てくれたことへの安心感で、涙腺が崩壊した。
「綾瀬………、ごめん。俺のせいで傷付けて………、ごめん………」
桐谷君に、ぎゅっと抱きしめられる。私は、それだけで心が安堵するのを感じていた。
「ううん………。大丈夫だよ。桐谷君のせいじゃないよ………。
それに、助けに来てくれた。それだけで………充分だよ」
そう言った私に、桐谷君は一瞬目を見開いた。けれど、すぐに優しく微笑んで強く抱きしめてくれた。
「何よ………、何よ!桐谷君、どうかしてるっ!そんな女のどこがいいのよっ!
私の方が、ずっとずっと可愛いじゃない………!私の方がずっと桐谷君に似合ってるっ!」
「っ………!」
視線の先には、血走った目をしてそう叫ぶかれんちゃんがいた。
「私が………、私の方が桐谷君のことを瞳ちゃんよりも何倍も好きなのに!!どうして、わかってくれないの………!?」
泣き叫び続けるかれんちゃん。
私は、そんな彼女を見ていられなかった。
「………決まってるだろ」
そう言った桐谷君は、かれんちゃんに近付いて行く。
「ッ………!!」
そして、かれんちゃんを壁に追い込みその胸ぐらをつかんでいた。
「………お前みたいに、心が歪んでないからだ!
綾瀬は何があっても、お前みたいに一方的に誰かを、何かを傷付けたりしない。
綾瀬はいつも、誰でも何でも慈しんで、その存在一つ一つを大切にするんだよッ!
柴咲、こんな風に人を傷付けて、一方的に欲求を満たそうとするお前にそんな事ができるか!?
そこが綾瀬とお前の差だ!顔なんてどうでもいいんだよ!よくも、綾瀬を傷付けてくれたな!?」