眠り姫はひだまりで【番外編】
「……誰かにとられたくも、なかった。僕の…彼女に、したかった」
…なぁ、色葉。
あの頃の僕が、どれだけ色葉の彼氏になることを夢見てたか、わかる?
「…悔しい。僕のほうが先に会ってるし、仲良くなってるのにさぁ。…とられたく、なかった…」
じわじわと、視界が歪む。
町田さんの、鼻をすする音が、近くで聞こえる。
…僕がどれだけ、色葉を好きだったかとか。
あの頃のあのとき、僕がどう思っていたかとか。
そんなの、色葉は知らなくていい。
僕だけが知っていれば、いい。
僕と色葉の間にあるのは、懐かしくて暖かい、思い出だけで。
…よかった、はずなのに。
「……こんな感情、汚くて見せらんねーよ………」
呟くと、町田さんが「汚くない…」と涙声で言う。
「…汚くなんか、ないよ…先輩の大切な、気持ちでしょう?」
…嫉妬に、下心に。
君はそんな気持ちでさえも、大切だと、言ってくれる?
「…ありがとう」
多分少しだけ、目が赤い。
それでも僕は目を細めて、僕の代わりに泣いてくれる町田さんへ、笑った。