眠り姫はひだまりで【番外編】


今度は喜んではくれなくて、唇を噛んだまま、やっぱりぼろぼろと涙を零した。


「先輩、好きです」


震えた声で、そんなことを言う。

『あの頃の色葉』ではない、『町田ちよ』を見つめながら、僕は笑った。






それから、どうやらドア付近で隠れていたらしい柚木と、三人で帰った。

柚木が『お邪魔っぽかったから』なんて言って唇を尖らせるのを、町田さんと笑って聞いた。


…笑いながら僕は、ひとつの決心をした。



「町田さん」

次の日。

別館、一年三組の教室にて。

僕はそのドアの前で、名前を呼んだ。

バサバサバサ…と町田さんが机の上に教科書類を落とす。

…いや、なんだその反応。

次の授業の準備をしている他の一年生達は、僕を物珍しそうな目で見ていた。


「せっ…先輩っ!?」


慌ててやってきた町田さんは、僕の突然の訪問に目を輝かせていた。

…でも、ごめん。

君にとってはあんまり、いい用じゃ、ない。


< 186 / 205 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop