眠り姫はひだまりで【番外編】
実際はもう、この子を見て色葉を思い出すことは、ほとんどない。
僕は色葉じゃない、『町田ちよ』を知ってしまったから。
…それでも。
色葉に似ていたから、町田さんのことを目で追っていた。
そんなやましい理由で接していたくせに、色葉のことを思い出さなくなったからって、町田さんのところへ行くなんて。
…そんなずるいこと、できない。
「………せん、ぱい」
震えた声が、頭上から聞こえる。
…ごめん、ごめん。
何度呟いても、足りないけど。
僕は頭を上げなかった。
「………っ」
視界に映る彼女の足が、階段へと向いた。
そして、僕の視界から消える。
… パタパタという、階段を駆け上がって行く音だけが、耳に届いた。
*
「…で?ちよちゃんこと、傷つけちゃったわけだぁ?」
昼休み、いつも通り柚木と別館の階段の踊り場で、弁当を食べる。
「……うん」
素直な返事をした僕に、柚木は眉を寄せた。