『華國ノ史』

三日月城塞防衛戦(後編)

 煌皇軍ボーワイルドの策は華國軍を襲い、戦意を消失させた。


 しかし、セブンの持つ聖遺物により、息を吹き替えさせる。


 更にセブンは自分の少数部隊を率い正門より討って出た。


 既に勝利を確信していた煌皇軍は制圧の為に歩兵を橋に向け進めていたのだった。


 セブン率いる部隊と後方に控える城塞に向け、

 煌皇軍の弓兵が矢を放つ。

 その数はとてつもなく多く、日の光を遮る程であったという。


セブン
「カトリ!」

 セブンが言うよりも早くカトリは呪文の詠唱を行い、

 強烈な向かい風を起こした。

 
 関所を煌皇側に向け吹く強力な風は矢の急進力を奪い、

 全て橋の掛かる谷間へと落とす。

 
 帰ってくる矢は煌皇軍の足をを止めた。
 
セブン
「クロネ!関所に対応した呪文を!」


クロネ「みんな離れて!」


 クロネはそう言うと自身の服に付けていた地塗られたホークを地面に放り投げた。


クロネ
「死後の晩餐会を今ここに!

 城より出られ参られません。

 偏食の貴婦人!

 マダム・ソウイリー」

 
 クロネが魔法を詠唱するとホークがガタガタと震え、

 次第に青白い馬が現れ、馬車までもが現れた。

 
 包帯にくるまれたドクロを覗かせた男が手綱を振ると、

 馬車がゆっくりと走り出す。

 
 ボロボロの馬車の窓からは無数の赤白い手が伸び、

 その異様な光景に煌皇軍は狼狽した。


クロネ
「ね?死霊使いって最悪でしょ?」

 
 クロネがみんなに問いかけてる前では続々と死者の山が出来上がる。


 煌皇軍を無数の手が襲い、馬車に引きずり込まれ体の一部を失い続々と放り出されている。

 
 馬車から放り出されたものは痛みよりも、皆恐怖に怯えていた。

 
 その手の速度は早く目にも止まらなかった。


「不味い、マズイ、当たり、これも不味い」

 
 断末魔は渓谷に響き渡り、煌皇兵は恐怖に顔を歪ませた。


ウルブス
「これは、華國三大悪霊の一角、

 人食いの貴婦人ですな、いやはや…」


ピエロ「グロイね」

 
 クロネが呼び出した死霊は馬車を進ませ多くの命を奪って行き、

 橋の中程まで敵を押し返す。


セブン
「ミニッツ、セコンド!どうだ?」

ミニッツ「よっしゃ!どいてろ」

セコンド「行くぞ!」

 
< 172 / 285 >

この作品をシェア

pagetop